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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

05 第五分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 页

青空文庫

いる場合、すぐ無視されたのも、あながち無理はない、また軽蔑でもない。

「――勝吉が参れぬとあれば、余人もまた、城を出るを、潔しとすまい。……というて、むなしく援軍の来るのを待つもどうか。わずか四、五日しかない兵糧を喰って」

三九郎貞昌は、再度、呻くようにいって、左右の者の顔を、一つ一つながめた。たれか、勝吉に代るべき、よい使いはないものかと物色しているような眼で。

「…………」

果てしない沈黙がつづく。

そのあいだを、搦手かどこかで小銃の音が聞える。小競り合いと見て、それには誰も動じなかったが、当面の問題には、まったく困憊のいろを漲らしていた。

強右衛門は、武者溜りの隅のほうから、のそのそと、這いすすんでいた。守将、副将のそばへ寄るほど、上席の者が座を占めているので、身を容れる余地はなかった。

「御評議中でございまするが……強右衛門から、おねがいのこと、申しあげてよろしゅうございましょうか」

人々のあいだから、低く両手をつかえて、彼の丸い背がおそるおそる云った。

守将の貞昌が、じっと、それへ眸をそそいだ。

「なんじゃ、強右衛門」

「ただ今、勝吉様へ仰せられていたお使いの役目は、御一族でなければいけませんでしょうか」