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あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

徳田秋声『日本の文学 9 徳田秋声(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:新世帯、足迹、黴、爛。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 页

青空文庫

何なら大学へでも入れて御覧になりますか。」医師は絶望的に言い断った。

その日の暮れ方に、湯島の糺の方へ大学の病室の都合を訊いてもらいに駈けつけたお庄は、九時ごろに糺と一緒に戻って来た。大学の方は明きがなかった。糺は方々駈けずりまわった果てに、前に下宿していたことのある友達が助手をしている、駿河台の病院の方へようやく掛け合ってくれた。

「どっちにしたって死ぬ病人だもんだで、病院に望みはない。」叔父はこう言ってすぐ入院の準備に取りかかった。

体の重い病人は、床のなかで着替えをさせられると、母親や叔父や、多勢の手で上り口へ掻き据えられた吊り台の上にやっと運び込まれた。そんなにまでして病院へ担ぎ込まれるのを、病人はあまり好まなかった。

「どうか早く癒って帰るようになっておくれよ。」母親は目に涙をためながら、門まで出て、担ぎ出される吊り台の中を覗き込んだ。

「留守を何分お願い申します。」と叔母は喘ぐような声で言った。

叔父と糺とは、提灯をさげた植木屋と一緒に、黙って吊り台の傍へ附き添ったが、その灯影にちらちら見える人々の姿の見えなくなるまで、母親とお庄は門に立って見送っていた。