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あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
徳田秋声『日本の文学 9 徳田秋声(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:新世帯、足迹、黴、爛。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 页
「新ちゃんは、いつのまにか私の莨入れを持って行いてますよ。」
お銀は、笑いながら笹村に言い告げた。月極めにしてある莨屋の内儀さんが、甥の持って行く莨の多いのを不思議がって、注意してくれたことなどもあった。
机の抽斗を開けてみると、学校のノートらしいものは一つもなかった。その代りに手帳に吉原の楼の名や娼妓の名が列記されてあった。妾――仲居――などと楽書きしてあるのは、この場合お銀のこととしか思えなかった。
「ああいう団体のなかに捲き込まれちゃ、それこそお終いだぞ。呼び出しをかけられても、今後決して外出しない方がいい。」
笹村は甥を呼びつけていいつけたが、甥は疳性の目を伏せているばかりで、身にしみて聞いてもいなかった。そして表で口笛の呼出しがかかると、じきにずるりと脱けて行ってしまった。
「いつかの朝、顔を瘤だらけにして帰って来たでしょう、あの時吉原で、袋叩きに逢ったんですって……言ってくれるなと言ったから言いませんでしたがね。」お銀は笹村に言い告げた。
「その時も、あの連中につれられて行ったようですよ。あの中には、髭の生えた人なんかいるんですもの。それに新ちゃんは乱暴も乱暴なんです。