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あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

徳田秋声『日本の文学 9 徳田秋声(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:新世帯、足迹、黴、爛。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 页

青空文庫

奥へ通ると、水口の方で、蓮葉なような口を利いている女の声がする。相手は魚屋の若い衆らしい。干物のおいしいのを持って来て欲しいとか、この間の鮭は不味かったとか、そういうようなことを言っている。お前さんとこの親方は威勢がいいばかりで、肴は一向新しくないとか、刺身の作り方が拙くてしようがないとかいう小言もあった。

お作は嫂と一緒に、お客にでも来たように、火鉢を一尺も離れて、キチンと坐って聞いていた。

「それじゃね、晩にお刺身を一人前……いいかえ。」と言って、お国は台所の棚へ何やら収い込んでから、茶の室へ入って来た。軟かものの羽織を引っ被けて、丸髷に桃色の手絡をかけていた。生え際がクッキリしていて、お作も美しい女だと思った。

お国は、キチンと手を膝に突いている二人の姿を見ると、

「オヤ。」とびっくりしたような風をして、

「何てえんでしょう、私ちっとも知りませんでしたよ。それでも、もうそんなに快くおなんなすって。汽車に乗ってもいいんですか。」と火鉢の前に座を占めて、鉄瓶を持ちあげて、火を直した。

「え、もう……。」とお作は淋しい笑顔を挙げて、「まだ十分というわけには行きませんけれど……。