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あんこくせい

暗黒星

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」1939(昭和14)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 94,000 字 · 188 页

青空文庫

「不思議な青年だ。胸の中に冷たい美しい焔が燃えている感じだ。その焔が瞳に写って、あんなに美しくかがやいているのだ」

明智はその時の青年の異様に熱心な表情を思い浮かべて、心の中に呟いた。

「私は君の恐怖を取り止めもないものなどと言わない。何かあるのかもしれない。しかし、ただそれだけの出来事では、まだ私がどうかする時期でないように思う。このまま何事もなくすんでしまえばいいし、もしさらに何か妙なことが起こるようだったら、すぐ報告してください。その報告によって私の考えをきめることにしよう」

結局、明智はそういう意味の答えをして、青年を帰したのであった。それからついさきほどまで、ほかの事件の処理に追われて、青年のことは忘れるともなく忘れていたのだが、仕事が一段落して、アーム・チェアにもたれこみ、煙草と放心の一と時を楽しむうち、なぜか明智の頭の中に、美青年の姿とその言葉と、彼の住んでいる古城のような建物とが、異様に鮮明に浮き上がってきたのである。

探偵はわけのわからぬ不安を感じた。妙な胸騒ぎをおぼえた。あの美しい青年の上が、なぜかひどく気遣われた。

「変だぞ。こんな気持は久しく経験しなかったが……」