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あんこくせい
暗黒星
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」1939(昭和14)年1月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 94,000 字 · 188 页
ああ、これが東京なのかしらと、狐につままれたように思ったことであろう。それほど、その場所と建物とは、異国的で、現代ばなれがしていた。
年代をはっきりしるすことは差し控えるが、ある年の春も半ばのどんよりと曇った夜のことであった。その奇妙な赤煉瓦の建物の中に、五、六人のしめやかな集まりがもよおされていた。といっても、廃墟に巣くう盗賊などのたぐいではない。その西洋館に住む家族たちの集まりなのである。この古城のような建物には、人が住んでいたのだ。奇人資産家として人にも知られた伊志田鉄造氏一家のものが住んでいたのだ。近所の人はその伊志田氏の姓を取って、この怪西洋館を「伊志田屋敷」とも「伊志田さんのお城」とも呼んでいた。
「お城」には五、六人の家族と、三、四人の召使いとが住んでいるらしかったが、夜になれば、どの窓も明りが消えて、建物全体がまっ黒な大入道のように見えた。昼間でも、「お城」はひっそりと静まり返っていて、建物の広いせいもあったのだろうが、二階の窓に人の影の映ることも稀で、そとからはまるで空き家のように感じられた。時たま窓から人の顔などが覗いていると、なんだか物の怪のように無気味で、通りかかる付近の人を怖がらせるほどであった。