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あんこくせい
暗黒星
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」1939(昭和14)年1月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 94,000 字 · 188 页
「どうしたんだ。何をそんなに見ているの?」
明智もその方へ眼をやった。窓のそとにはただ夜の闇があるばかりであった。その闇の中に、闇よりも黒い大入道のようなものが聳えていた。伊志田屋敷の名物の円塔である。西洋の城郭にあるような、煉瓦造りの円形の塔である。一郎の眼は、どうやらその円塔のあたりに注がれているらしいのだ。
「あれをごらんなさい。僕はゆうべもあれを見たのです。なんだか恐ろしいのです。僕の幻覚じゃないでしょうか」
「あれって、なに? どこを見ているの?」
「塔の頂上の窓です。じっと見ていてごらんなさい……ほら、あれです。先生、あの光です。先生には見えませんか」
それは決して一郎の幻覚ではなかった。円塔の頂上の部屋の窓に、ボーッと蛍火のような光が射している。室内の電燈がついたのではない。何かもっと小さな白っぽい光だ。もしかしたら、どこか外部からの光が、ガラスに反射しているのではないかと考えたが、そうではなくて、やはり室内からの光らしい。かすかに揺れている。
「ね、見えるでしょう。さっきから光ったり消えたりしているのです。ほら、消えてしまった。きっと今にまた光りますよ」