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あんこくせい

暗黒星

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」1939(昭和14)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 94,000 字 · 188 页

青空文庫

しかし……残念なことに、あの人にはほかにもいろいろ困った情況が揃っているのだし……」

明智はそれを言おうか言うまいかとためらっているように見えた。

「えっ、ほかにもいろいろって、それはどんなことですか」

「君にはまだ言わなかったけれど、お父さんはもうご存知のことなんだ。隠しておいても仕方がない。それよりもすっかり話し合って君の考えも聞く方がいいかも知れない。いつかの晩、君があの塔の窓に妙な光りものを見つけて、僕が塔へ調べに行ったことがあるね」

明智はその夜の異様な光景をまざまざと思い浮かべているもののように、宙を見ながら言った。

「ええ、覚えています。あのとき先生のお帰りが大へん手間どったので、何があったのかと、僕はうるさくおたずねしたのだけれど、先生はなぜかあいまいにしかお答えにならなかったのです」

「君に聞かせて興奮させては、からだにさわると思ったからだよ。実はあの時、塔の三階の窓から、屋敷のそとにいる誰かに懐中電燈で合図をしていたのは、綾子さんだった。僕は顔もみたし、その人が綾子さんの居間へはいったのも見届けた。綾子さんの愛用しているヘリオトロープの匂いが、なぜかふだんよりも強く匂っていた」