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あんこくせい

暗黒星

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」1939(昭和14)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 94,000 字 · 188 页

青空文庫

しかし僕はそういうことを考える前に、まだ一つ、この謎を解くいとぐちが残っていると思うのだよ。それはね、この犯罪には共犯者がなかったかということだ。いや、共犯者というよりも、一人のうら若い女性を人形として、心にもない行動を取らせた、恐るべき蔭の人物が存在するのではないかということだ。

綾子さんは塔の頂上から、屋敷のそとの誰かに、懐中電燈の合図をした。あれはただ一と晩のことではなくて、その前にも、その後にも、人知れず同じ合図を繰り返していたかもしれない。その合図を受けていたのはいったい何者だろう。

僕は犯人の断定をくだす前に、先ずこの秘密を探らなければならないと思うのだよ」

「ああ、そうでした。僕は塔の出来事を知らなかったので、そこまで気がつきませんでしたが、先ずそれを確かめてみなければなりませんね」

一郎は、少しでも姉の罪の軽くなることを願うかのように、やや明かるい表情になっていうのであった。

「むろん僕は塔の出来事があってから、君のうちに泊っていた三日のあいだ、毎晩それに注意していたが、三日間は何事もなかった。

それからここへ入院して、二日ほど何を考える力もなかったが、おととい、そのことを思い出して、助手のものに、毎晩君のうちをそとから見張らせてあるのだよ。