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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

02 第二部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,073 字 · 223 页

青空文庫

「それが悪いか」

――はあ。

「こんな些細なことが処理できず、いちいち幕府老中をわずらわすようで一藩の国老が勤まるか、そう云われたら大学はどうする、大学だけではない、家中不取締りの責も問われるかもしれないぞ」

――わかりました。

「大学は予期したとおりやってくれる、彼を首席国老にし、仕置を彼一人に任せたのは成功だった」

――船岡どのはたしかでございましょうな。

「茂庭と断絶したことは間違いない、涌谷もどうやら甲斐とは不和なようだ、甲斐に対してしきりに悪声を放っている、というではないか」

――私はそこになにかあると存じますが。

「斎宮はなかなか安心せぬ男だな」

――田舎者は疑い深うございます。

「六カ条が落着したら、うむをいわさず船岡を国老に据えよう、たしかかたしかでないかは、それからの問題だ」

――では寺池さま御接待の支度を致します。

「船岡の話しは面白かった」

――はあ。

「あの男が鹿の角にかけられたというのは面白い、いつもとりすました、煮えたか焼けたかわからないあの男が、ははは、ばかなやつだ」

――いかにも。

「ばかな男だ、こんど会ったら顔を見てくれよう、こともあろうに鹿の角にかけられるとは、ははは」