轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

02 第二部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,073 字 · 223 页

青空文庫

片腕になったからこそ、石川さんはきっとやるに相違ない、と新八は思った。

「もうそんな話しはやめ」おみやは膝をずらせた、「ねえもっとこっちへお寄りなさいよ」

「これで充分です」

「じゃああたしのほうからいくことよ」

「私は帰ります」新八は盃を置いた。

「なんですって」

「私は帰ると云ったんです」

「なぜそんな意地悪なことを云うの」

「私は」と新八は唇をふるわせた、「私は、自分が厄介者だ、ということに、今日はじめて気がつきました」

「なにを云うの新さん」

「私はなにもせずに、柿崎さんや貴女に食わせてもらっている、この着物も貴女に買ってもらったものだし、小遣いまで」

「よして、よしてちょうだい」

おみやは立って、新八にとびつき、避けようとする彼を両手で抱いた。

「なにを急にへんなことを云いだすの、なにが気に障ったの、あなたが厄介者だなんて誰が云って」

「放して下さい」彼は身をもがいた。

「いや、新さんたら」

新八は女の手をふり放した。おみやは「新さん」と叫び、立って逃げようとする新八に、うしろからしがみついた。いまだ、と新八は心のなかで叫んだ。この女と別れるのはいまだ、いまこそきっぱり片をつけられる、逃げろ、たったいまここから逃げだしてしまえ。