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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

02 第二部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,073 字 · 223 页

青空文庫

彼は銃を二梃持っており、炉の火を火繩につけると、それを銃に仕掛けて、一梃を文造に渡してやった。

「弾丸はこめてある」と与五兵衛は云った、「一発きりだ、これでおどして、きかなかったらぶっ放せ」

「久兵衛にですか」と平助が訊いた。

与五兵衛が「知れたことだ」と云った。

「でも久兵衛はおらの一人っ子ですがな」

「心配するな、あいつは親のおめえの首さえ絞めかねない人間だ、おめえの世話くらい小屋の者がみてくれるぞ」と与五兵衛が云った、「おまえらは北郷のほうを捜せ、おらは小坂のほうを捜す、みつかってもみつからねえでも、日が昏れたらこの小屋へ戻って来い、わかったな」

二人はゆっくりと頷いた。

与五兵衛は周防に断わりを云い、身支度をして、かれらと共に出ていった。三人が出ていって半刻ほどすると、館から村山喜兵衛が登って来た。

「仙台から使者がありまして」と喜兵衛が云った、「古内主膳さまが亡くなられたということでございます」

「古内が、――それはいつのことだ」

「昨日ということです」

「船岡はまだ戻らない」

「与五兵衛も留守でございましたか」

「いや、与五はいた」

周防は首を振って、いまの出来事を話した。