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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

02 第二部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,073 字 · 223 页

青空文庫

と訊いた。隼人をやるつもりだ、と甲斐は答えた。これからも打合せをしなければならぬ事があると思うが、そのときどうやって連絡したらいいか。それはそのときに応じてこちらから連絡しよう、おそらくその必要はないだろうが、と甲斐は云った。そこへ、戸口から村山喜兵衛がはいって来た。

「お迎えにまいりました」と喜兵衛は云った。

彼のはいって来た戸口の、外は明るく、小屋の内部はひどく暗くみえた。

「寺に馬が預けてある」と周防が云った。

「そこで待っていてくれ」

「隼人に云え」と甲斐が喜兵衛に云った。

「古内へは隼人がゆくように、葬儀の済むまで仙台にいるように、と云ってくれ」

「御帰館ではないのですか」

「うん、まだ此処にいる」

喜兵衛は礼をし、「では日観寺でお待ちしております」と周防に云って、たち去った。

周防は支度をして、土間へおりると、そこへまた、戸口から二人の男がはいって来た。文造と平助である。平助のほうが先にはいって来たが、そこに甲斐がいるのを見ると、さも安堵したように微笑した。それは僅かに歯が見えただけであったが、頭巾をぬぎながら、ひどくゆっくりと文造に振返り、それから云った。