轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

02 第二部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,073 字 · 223 页

青空文庫

甲斐はふと、手を止めて、顔をあげた。うしろの山道で、木の枝から雪の落ちる音がし、人のおりてくる足音が聞えた。甲斐は、そこに置いてある山刀を見、じっと外のけはいに耳をすませた。

綿にでも包まれたような、はっきりしない足音、というよりもそのけはいが、山道をおりて来て、戸口の外に停った。甲斐は弓を逆に構えた。足音は停ったが、そのまましんとなった。

「誰だ」と甲斐が云った。

戸口の外で人の動くけはいがし、くすくすと忍び笑いをするのが聞えた。若い娘の声である、甲斐は弓を持ち替え、また千段を巻き始めた。――殿さまはいらっしゃるだ。はいれ、おめえがさきだ。ふじこがさきだ。はいれっていうによ。おらいやだ。そんな問答が聞え、やがて、「はいってもいいか」とふじこの云うのが聞えた。

「だめだ、与五に怒られるぞ」と甲斐が云った。

するとまた忍び笑いが聞え、戸口をあけて、粉雪といっしょに三人の娘がはいって来た。ふじこ、きよき、そしてもう一人は初めて見る顔だった。

「与五が怒るぞ」と甲斐が云った。

三人はまだくすくすと笑いながら、戸口を閉め、雪帽子や蓑をぬいで、板壁の釘に掛け、それから、三人かたまって挨拶をした。