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きゅうこんさんじゅうし

求婚三銃士

佐々木 邦

「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页

青空文庫

「丸尾さんは何処までも私を出し抜く積りですわね」

「僕、もう出掛けます」

と安達君は帽子に手をかけた。

「私もお供致しましょうか?」

「さあ」

「考えて見ると、今日は正式の訪問ですから、仲人同伴が本当かも知れませんわ」

「…………」

「玄関まで送り届けて、御主人なり奥さんなりにお目通りして、それでは何分宜しくお願い申上げますって」

「行って参ります」

「あゝ、困った/\」

と奥さんは念を入れたいにも、今からではお化粧が間に合わない。外出の折は十以上若返ることを原則にしている。況して相手が丸尾夫人だ。

橋本さんのところはつい目と鼻の間だ。距離の関係から言えば安達君が最も有力に縄張りを主張出来る。安達君は玄関の靴の数で、吉川君ばかりでなく瀬戸君ももう来ていることを認めた。丸尾夫人のらしい草履がお清の注進を裏書していた。北海道も昨今は一生懸命だから頭が働く。

「やあ。早かったね」

「上には上がある。瀬戸君が第一着だった」

「この間は失敬。相変らずかい?」

と瀬戸君は落ちつき払っていた。

「君は一人かい?」

「一人とは?」

「仲人同伴じゃないのかい?」

「一人さ。何分宜しく」

「それでこそ正々堂々だ」