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きゅうこんさんじゅうし
求婚三銃士
佐々木 邦
「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页
柄にない芸当があるんですよ」
と閣下が主張した。
「お父さんのはこれね」
と佳子さんが言った。
「何だい?」
「これよ」
と指折り数える手真似だ。閣下は三十一文字を一々勘定して嵌め込む手堅い歌人らしい。
「お嬢さまは作歌の方も御堪能でいらっしゃいましょう?」
「何う致しまして。私、悉皆お父さんの御性格を受け継いでいますから」
「まあ/\」
と大谷夫人は返す言葉に困った。否定すれば閣下の不器用を肯定することになる。
「何も出来ませんわ」
「御冗談ばかり」
「お饒舌ぐらいのものでしょう。お得意は」
と佳子さんは謙遜だった。
「僕も駄目です。不器用では誰にも負けません」
と安達君は何か言う必要を感じて告白した。しかしこれでは佳子さんを同類に引っ張り込む形になる。
「確かに器用の方じゃありませんね」
と閣下が直ぐに認めてくれた。
「はあ」
「実は今日はサン/″\ですよ、安達君」
「閣下でございますか?」
「いや、あなたですよ」
「はゝあ」
「最初吉川君があなたと瀬戸君を出し抜きました。それから瀬戸君があなたを出し抜きました。あなたは二人に出し抜かれているんです」
「はゝあ」
「三人の中で一番の正直者はあなたでしょう」