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きゅうこんさんじゅうし

求婚三銃士

佐々木 邦

「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页

青空文庫

「元気です」

「もう大分御高齢でしょう? 私の先生ですから」

「七十八か九です」

「未だそんなところですか? 私が六十一だから、成程、その辺でしょう」

「閣下のお名前は子供の時から承わっていました。お目にかゝって光栄に存じます」

「いや、もう老骨の役に立たずです。閑人ですから、遊びに来て下さい」

「伺わせて戴きます」

それで話が切れたところへ、

「これは驚きましたな。閣下も矢張り小学校の産物でございますか?」

と橋本大佐が感想を洩らした。

「何も驚くことはなかろう」

「実は寺子屋産だとばかり思っていました」

「馬鹿にしちゃいけない」

「ハッハヽヽ」

「失礼ですが、橋本さんのお兄さんは狸穴にいらっしゃる閣下じゃございませんか?」

と瀬戸君が訊いた。

「然うですよ」

「僕、橋本さんの直ぐ御近所に下宿しています」

「はゝあ」

「甥御さんの弼さんが僕のところへ時々遊びにお出になります」

「奇遇ですな、これも」

「何分宜しく」

「今日から御入門ですか?」

と橋本さんは見当違いをしていた。

当の橋本閣下でなくても、その弟を知っている人なら充分用が足りる。心当りが一遍に二人出来た。瀬戸君は謡曲の先生よりも溝淵閣下を適任者と認めたこと言うまでもない。