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きゅうこんさんじゅうし

求婚三銃士

佐々木 邦

「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页

青空文庫

「しかし一時間早く起きれば後がそれ丈け早く草臥れますから、結局同じことでしょう」

「いや、習慣になれば平気です。僕は実行しています。僕は五時から六時半まで必ず読書をします」

というような具合だ。宣伝らしくもあれば、教訓らしくもある。そこへ行くと吉川君あたりは違う。

「寝坊をして後れそうになると円タクです。三十銭に値切るんです」

「ひどいのね」

「しかしお金が惜しいんじゃないんです。値切るほど速く走ってくれるからです。遅刻はボーナスに影響しますから。三十銭なら円タクに乗っても引き合います」

「一寸伺いますが、ボーナスってものはお金でございましょう?」

「無論ですよ」

「それじゃ結局お金が惜しいんじゃございませんか?」

と佳子さんは遣り込める機会がある。元来困らせてやると公言しているのだから、少し困ってやれば宜いのに、瀬戸君は試験場の心得だ。相手を実力で敬服させようと努力する。

「僕は毎朝始業の十分前に学校に着きます」

「御規則通りね。修身の」

「はあ?」

「常に十分前に着く人は成功するんでございましょう? オホヽ」

「しかし僕のは習慣です。学生時代から然うでした。詰まり僕はその方が便利なんですね。