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きゅうこんさんじゅうし

求婚三銃士

佐々木 邦

「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页

青空文庫

もう就職して一人前になったんですから、学生とは違います。交際上も不便だからって、友人が注意してくれましたから……」

「私、その方も疾うから考えていますのよ」

「何の方ですか?」

「お嫁さんでしょう?」

「ハッハヽヽ」

「この頃の若い人ってものは豪いんですわね。お顔一つ赤くもなさらないで、お頼みになるんですから」

「ハッハヽヽ」

「狡いのね、笑って誤魔化して」

「違うんですよ、奥さん」

「心得ていますから御安心下さい」

「本当に違うんですよ」

「何あに? それじゃ」

「僕の標札を門へ出させて戴きたいんです。名刺に書くのに、大谷方では如何にも居候のようで具合が悪いというんです」

「まあ。そんなこと?」

「はあ」

「お安い御用ですわ」

「御主人にも奥さんからお願いして置いて下さい」

「お願いも何もないじゃありませんか?」

「それじゃ早速出させて戴きます。実は先刻来た村上君の注意です。成程と思っていたところへ、今散髪屋で書生と間違えられました。六年間辛抱したと言って頻りに褒めてくれましたから、得意になっていたら、親方は僕をこゝの家の書生だと思っていたんです」

「まあ/\」

「矢っ張り僕は人間が地味に出来ているんでしょうね。