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きゅうこんさんじゅうし

求婚三銃士

佐々木 邦

「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页

青空文庫

「いや」

「何あに? 瀬戸さん」

と佳子さんが怪しんだ。

瀬戸君はその晩帰りに又奥さんにお目にかゝった。持久戦で焦り気味のところだったから、手柄を立てゝ、一気呵成に勝ちを制する積りだった。病癖については士君子の口にし難いところとして明言を避けたが、自分の力で矯正出来るから御安心下さるようにと繰り返して主張した。溝淵閣下から封じられていたから、当り触りのない程度を守ったのである。その為め独り合点になってしまって、相手には何のことか見当がつかない。遠廻しに徹底させようとするから苦しい。目を白黒していた。奥さんは好い加減に扱って送り出した後、直ぐに閣下に相談した。

「して見ると、溝淵閣下の懸念は矢張り本当に根拠があるんだよ」

「無論でございますわ」

「もうソロ/\始まっているんだ」

「何を言っていらっしゃるのか分りませんの。表情が如何にも煩悶的でございました」

「閣下に因果を含められて、軽い発作を起したのかも知れない」

「何うも当り前じゃございませんよ」

と閣下夫婦は再び首を傾げた。

「お母さん、瀬戸さんは何ういう御相談でございましたの?」

と佳子さんが聞きたがった。