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きゅうこんさんじゅうし
求婚三銃士
佐々木 邦
「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页
安達君は鯛の塩焼に箸をつけながら、果してもう一遍祝って貰う機会があるだろうかと思った。人柄が好い丈けに、自信力が足りない。イヨ/\吉川君と一騎討ちだけれど、此奴が又ナカ/\の強敵だ。しかし瀬戸君が退却したのは兎に角大きな寛ろぎだった。奴、何うしたのだろう? 本当に他に好い縁談があって手を引いたのだろうか? それとも引かざるを得ないような羽目に陥ったのだろうか? いや、全体が策かも知れない。すると大変だ。策士のことだから、何んな謀を繞らすかも分らない。と気がついて、うっかり安心は出来ないと思った。折から小宮君の言葉が一種の霊感のように頭の中に閃いた。それは瀬戸君が早晩失脚して安達君と吉川君の一騎討ちになるだろうということだった。悉皆当っている。そこで安達君は報告の為め、食後小宮君へ電話をかけたら、もう知っていたには驚いた。
「早耳だね」
「君の方が晩耳だよ。心細いな。今頃改まって報告かい?」
「今日聞いたんだ」
「僕は四五日前から知っている」
「ふうむ」
「何うだい? 来ないか?」
「さあ」
「実は他にも聞き込んだことがあるんだ」
「策を授けてくれるかい?」
「うむ」