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きゅうこんさんじゅうし

求婚三銃士

佐々木 邦

「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页

青空文庫

「些っとも構いません。僕は日曜はいつもお昼と一緒です」

「御覧なさい。悉皆告白なすったじゃありませんか?」

「屑く降参します。頭の好い人には迚も敵いません」

と、これが吉川君の常套手段だ。やり込められて御機嫌を取る。瀬戸君と反対だ。気が置けないから親しみを感じる。少くとも積極的に嫌われるということがない。

佳子さんは相手を困らせれば宜いのだ。満足して話し込んだ。

「吉川さん、申上げようと思って忘れていました。昨夜、面白いことがあったのよ」

「何ですか?」

「銀座へ参りましたの。土曜日ですから、弼にねだられて」

「成程」

「会社員らしい若い人が私を呼び止めましたの。手帳と万年筆を出して、サインをしてくれと仰有るんです。私を女優と間違えたんですわ」

「ハッハヽヽ」

「人中でしょう。私は真赤になってしまいました。安達さんが憤慨して、『君、失敬じゃないか?』って。オホヽヽヽ」

「安達君も一緒でしたか?」

「はあ。『これは橋本閣下の令嬢だ』って、私を銀座で宣伝して下さいましたの」

「御迷惑でしたろう?」

「いゝえ。後から父が大笑いを致しました。土曜日は安達さんの番ですけれど、弼がねだったものですから、父が応接間を銀座まで延長して下さいました」