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きゅうこんさんじゅうし

求婚三銃士

佐々木 邦

「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页

青空文庫

握手どころじゃございませんわ」

「何ういう機会ですか?」

「思いつきですわ、これは。民間夫人と違って、国際的よ、私の社交範囲は。褒めて戴く値打がございましょう?」

「何うも前置が長いですな」

「本式のクリスマスよ。一晩アメリカへ帰ったような心持になって騒ごうというのですから、万事彼方の習慣を守ります。天井から宿り木の吊してある部屋がございます。御存じでしょう? その宿り木の下では誰が誰を捉えて接吻しても、無罪放免ってことになっています」

「成程」

「無論お祭り騒ぎの冗談ですけれど、彼方ではそれを求婚の意思発表に利用するものがあるんですって」

「無罪放免なら、求婚でなくてもやります。やり徳です」

「まあ。俊彦さんも余りお心掛の好い方じゃございませんわね」

「ハッハヽヽ」

「然ういう西洋の茶目さんが待ち伏せしていますから、うっかり通れませんわ。でも、何うしてもそこを通らなければならないようになっていますの。大威張りで通るのは太っ女のお婆さんばかりよ」

「ハッハヽヽ」

「私なんか皆に狙われていますから、容易じゃございません」

「取っ捉まりはしませんでしたか?」

「いゝえ。主人と手を取り合って通りました。