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きゅうこんさんじゅうし
求婚三銃士
佐々木 邦
「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页
「その偶然に意味がございましょう?」
「日曜と大祭がかち合っても文句は申されませんわ」
「問題が違いますよ」
「違いません」
「…………」
「…………」
何方も黙ってしまった。橋本夫人が佳子さんを伴って入って来たのだった。佳子さんが中心になって、話が弾んだ。大谷夫人と丸尾夫人は辛抱較べをした。この際、早く帰った方が負けになるような気がしたのである。立った後で何か批評をされるに定っている。そこで二人は昼近くになって、一緒に辞し去った。玄関まではお互に譲り合ったが、大谷夫人は門を出ると直ぐに歩を速めて、見返りもせず、筋向いの家へ帰り着いた。
「御免下さい」
「…………」
「御免下さい」
「誰か見えましたよ」
と女中を促したら、
「丸尾さんの奥さまでいらっしゃいます」
と目を円くして取次いだのには尠からず驚いた。家までついて来たのである。大谷夫人は玄関へ出て請じたが、丸尾夫人はお辞儀をするばかりで応じない。
「こゝで失礼させて戴きます」
「まあ、何うぞ」
「いゝえ」
「こゝではお高くてお話が伺えません。何うぞ、奥さま、何うぞ」
「それでは真の一寸」
「何うぞ御ゆっくり」
「余り強情を張るようで失礼でございますから」