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きゅうこんさんじゅうし

求婚三銃士

佐々木 邦

「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页

青空文庫

あれは全く、私、些っとも関係のないことでございます。橋本さんの奥さまが日をお定めになって、それが偶然木曜日だったものですから、吉川さんの番から始まりました。その証拠に吉川さんは木曜丈けで、後金曜土曜と安達さんの方が続いておりました」

「申訳ございません。そこまで考えずに、僻んだことを申上げて今更恥じ入ります」

女は矢張り気が弱い。言う丈け言う積りで来た人とそれを承知で迎えた人が直ぐに妥協して、少時世間話に打ち興じた。お互に然う悪い料簡の人でもないと思った。問題さえなければ、お附き合いが出来ると考えた。しかしその夕刻、大谷夫人は再び丸尾夫人の誠意を疑わなければならないことになった。昼から買物に行って帰って来たら、女中が、

「奥さま、大変でございますよ。丸尾さんの奥さんが二千円のダイヤをお落しになりました」

と喧しく報告した。

「まあ/\、何処へ?」

「家のお玄関かお座敷かも知れないと仰有って、女中さんを見せに寄越しました。指輪の爪が弛んでいたものですから、落ちたんでございますって」

「そんなこと言って来られちゃ迷惑しますわ。お前、何とお答えしたの?」

「さあ」