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きゅうこんさんじゅうし

求婚三銃士

佐々木 邦

「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页

青空文庫

と佳子さんが見つけた。安達君が一寸覗いたのだった。

「はあ、尻尾を振って、御門までついて参りましたの」

「安達さん」

「はあ」

「卑怯よ。お隠れになるのは」

「…………」

「いらっしゃいよ」

安達君は得たり賢しと、お相伴をして、そのまゝ上り込んだ。大谷夫人は挨拶を簡略に済ませて、早速用件に移った。

「佳子さん、先刻丸尾さんのところの女中さんが言ってお出になりませんでしたか?」

「参りました。二千円のダイヤでございましょう?」

「はあ。宅へも参りました。私、心持が悪くて、心持が悪くて」

「オホヽヽヽ。奥さまは御正直でいらっしゃいますわ」

「まあ! 何故? 嘘?」

「ダイヤが指輪から落ちたことは本当でございましょう。でも、二千円のダイヤなら、奥さんが御自分で目の色を変えて探しにお出になりますわ」

「私なんか、人様のものでも、斯うして慌てくさって、お伺いするんですから」

「奥さま。あれ、仏蘭西ダイヤよ」

「あらまあ!」

「二三十円のものでしょう、精々。私、先からチャンと見ていますから、些っとも驚きませんの」

「それを二千円なんて吹っかけて、まあ、何て人でしょう?」

「私、何故警察へ早くお届けになりませんのって、女中さんに訊いたら、御主人さまが局長さんと御一緒に御出張中ですからって」