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きゅうこんさんじゅうし
求婚三銃士
佐々木 邦
「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页
「矢っ張り出し抜かなければ駄目よ。今までは此方が正直過ぎたんですわ」
「斯ういう特別が利くのは勝味のある証拠だ。安達君、大いにやっているんだろう」
と大谷さんも喜んだが、そこへ小宮君から安達君へ呼び出しの電話がかゝって来た。大谷夫人が代って聴き取った。
「今晩は橋本さんへ上っています。いゝえ、特別です。はあ。番じゃないんですから有望でしょう? はあ。出し抜きましたの。はあ。昨今迚も調子が好いのよ。いゝえ。オホヽヽヽ、はあ。はあ/\。そんな急用? 重大事件? はあ。分りました。それじゃ早速伺わせます。はあ。さよなら」
女中が橋本家へ走った。安達君は稀に出し抜いたと思ったら、早速呼び返されて、甚だ不本意だった。
「奥さん、何ですか? 急用って」
「小宮さんが直ぐにお出下さいって」
「困りますな。僕、又引き返す積りにして来たんですから」
「重大事件ですって。今晩の機会を遁すと、形勢が何う逆転するかも知れませんと仰有いますの。あなた、お力添えをお頼みしてあるんでしょう?」
「はあ」
「早くいらっしゃいよ。佳子さんの方は私、又特別を拵えて上げますわ」
と大谷夫人が促した。