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きゅうこんさんじゅうし

求婚三銃士

佐々木 邦

「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页

青空文庫

「あなた、瀬戸さんは○○大学でいらっしゃいますよ。お手紙に書いてございました」

と奥さんが何か問題のように長倉さんの注意を呼んだ。

「うむ。○○大学だよ」

「お尋ねすれば分るかも知れませんわ」

「然う/\。しかし数が多いんだからね」

「何でございますか?」

と瀬戸君が訊いた。

「去年矢張り経済学部を卒業した人ですが、吉川俊彦ってのを御存じありませんか?」

「吉川君! 知っています。親友です」

「それは/\」

「矢っ張り伺って見るものでございますわ」

と奥さんは如何にも満足のようだった。

「吉川君を御存じでいらっしゃいますか?」

「いや、未だ会っていませんけれど、実は娘と縁談が始まっているんです」

と長倉さんが答えた。

「はゝあ」

瀬戸君はつい声を上ずらせて、占まったと思った。それくらい驚いたのである。四五日前に小宮君から聞いた縁談だ。吉川君はその令嬢の見合写真を万一の場合のお守りにして、求婚戦場を馳駆しているのだった。

「何んなお方でいらっしゃいますか?」

と奥さんが膝を進めた。

「さあ」

「お写真も戴いていますし、調査もしていますけれど、あなたの御親友なら、あなたにお尋ねするのが一番近道でございます」