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きゅうこんさんじゅうし

求婚三銃士

佐々木 邦

「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页

青空文庫

お坊っちゃんってことを自分でも意識していますから、努めて然うでない風をするんでしょう」

「何か悪い評判をお聞きになったことはありませんか?」

「それは絶対にありません。僕は六年間毎日顔を合せていましたから、その点は断言出来ます」

「すると先ず極く普通ですな」

「はあ、親友ですから贔負目があるかも知れませんけれど、決して悪い人間じゃありません。僕は気むずかしい性分ですから、若し吉川君に並外れて好くないところがあれば、もう疾うに御免蒙っている筈です」

「大体分りました」

「お話が進んでいるんですか?」

「それが妙に延び/\になっているんです。厭なら厭と言って断ってくれゝば宜いのに、いつまでも引っ張っていて埒が明きません。一体、仲人が緩慢です。会社の技師ですが、吉川君のお父さんのお弟子さんですから、遠慮ばかりしているんです」

「十月に始まって、もう年を越しています。余りお手間がかゝりますわ」

と奥さんも訴えた。

「長いですな」

「何か御事情があるんじゃございませんでしょうか?」

「さあ」

と瀬戸君、知っているけれど、言うことが出来ない。

「吉川さんとは時々御一緒になりますの?」