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きゅうこんさんじゅうし

求婚三銃士

佐々木 邦

「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页

青空文庫

実際斯ういうところで方針を発表するものでない。

「あなた、地下室でございますよ」

とエレベーター・ガールが注意してくれた。

安達君は心気頓に回復した。外へ出たら、秋の空が高かった。日本橋から麻布の狸穴まで、電車の中も佳子さんのことを思い続けた。瀬戸君も瀬戸君の主張した九分一分の見込も何処かへ飛んでしまった。考えて見ると、佳子さんが目につき始めたのは三年ばかり前からだった。橋本家は大谷家に近い。安達君は弼君がボールをやっているところへ行ってお相手を勤めた。その中に弼君の方から誘いに来た。そこへ吉川君が加わった。往来でやってはならんとお巡りさんに叱られたことがある。弼君は当時中学校へ入ったばかりで豪くなった積りだったから、大学生と遊ぶのを喜んだ。安達君のところへやって来て、

「タスクとは何う書く?」

と訊いた。安達君が助と書いたら、そんな変な字じゃないと言って、弼という字を教えた。安達君はその次に試験をされた時、直ぐに書けなかったものだから、

「頭が悪いんですね」

と極めつけられた。弼君が佳子さんへの切っかけだった。行き会うとお辞儀をするようになった。安達君と吉川君は期せずして弼君の御機嫌を取ることに一致した。