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きゅうこんさんじゅうし
求婚三銃士
佐々木 邦
「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页
他の点では決して負けない積りだ。高等官と支店長なら主人の格式も似たり寄ったりだろう。何方も子供がないから自己奉仕以外にこれという屈託がない。或日二人は偶然三越で落ち合った。大谷夫人が着物の柄を吟味しながら、不図気がつくと、丸尾夫人が直ぐ側に立っていた。表向きは素より清い交際である。
「あらまあ! 奥さま」
「まあ/\」
「お気に召したものがございましたら、何うぞお沢山に」
「有難うございます。オホヽヽヽ」
「奥さま、これ私に何うでございましょう?」
と大谷夫人は見ていた品物を肩に当てゝ批判を求めた。
「さあ」
「好い柄でございましょう?」
「柄そのものは結構でございますけれど、何ぼ何でも少し何でございましょう」
「何でございますの?」
「お派手でございましょう」
と丸尾夫人は平気で答えた。大谷夫人はこの恨みを忘れない。あんな礼儀作法を知らない人はないと言っている。以前は大谷夫人の独り舞台だったが、三年ばかり前に丸尾家が地方から吉川君の隣りへ越して来たのである。吉川君のところの借家だ。大谷夫人は吉川家へ伺った時奥さんから丸尾夫人に紹介された。その折の印象が悪かった。丸尾夫人は吉川夫人との話の中に、