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あさくさふどき

浅草風土記

久保田 万太郎

雷門以北「東京日日新聞 夕刊」1927(昭和2)年6月30日~7月16日<br>吉原付近「中央公論」1929(昭和4)年2月<br>続吉原付近「中央公論」1929(昭和4)年3月<br>隅田川両岸「中央公論」1935(昭和10)年9月<br>浅草田原町「三田文學」1912(明治45)年2月<br>あやめ団子「花形」1920(大正9)年8月<br>相模屋の路次・浅倉屋の路次「新演藝」1920(大正9)年8月<br>浅草の喰べもの「中央公論 夏期特別號」1920(大正9)年7月<br>夏と町々「時事新報 夕刊」1929(昭和4)年6月1日~30日<br>絵空事「新潮」1932(昭和7)年3月<br>一年「東京新聞」1946(昭和21)年4月15日<br>浅草よ、しずかに眠れ「苦樂」1948(昭和23)年2月<br>夜店ばなし「婦人公論」1931(昭和6)年7月<br>除夜「週刊朝日」1930(昭和5)年12月28日號<br>正月「婦人公論」1932(昭和7)年1月<br>水の匂「文藝春秋」1941(昭和16)年7月<br>町々…… 人々……「別冊文藝春秋」1955(昭和30)年2月~6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,294 字 · 318 页

青空文庫

――しかもそればかりでなく、そのうえ裏に、何につかうともない四五十坪の空地があった。夏はそこに土俵がつかれた。――その場所へ持って行って、器械体操をこしらえたものである。

ここに器械体操というのは「鉄棒」の謂である。その少しまえ、学校の運動場にはじめてそれがとりつけられ、ものめずらしいのに、わたしたちは夢中になった。それがやりたいばかりに、朝、課業のはじまる一時間もまえから、わたしたちは学校へつめかけた。大ぶりだの、中ぶりだの、海老上りだの。……一日も早くそうした離れわざまで行きたいと、毎日、砂だらけになってわたしたちは勉強した。

その「鉄棒」が友だちのうちに出来たのである。これに如くわたしたちの歓びはない。――うちへ帰るのをわすれて、わたしたちは、屡※(二の字点、1-2-22)平ちゃんと一しょに食ッついて行ったわけである。

さそわれるまま、ある日もわたしは食ッついて行った。十二月のはじめの、日のつまるさかりの、しかも曇って寂しい日だったが、わたしたちはそんなことに頓着なく、兵隊に行ったことのある洗い方を師匠番に、シャツ一つになって、ようやくのこと卒業することの出来た肱かけを幾たびとなくやり返した。