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しんやのしちょう
深夜の市長
海野 十三
「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页
『深夜の市長』の手に落ちれば、四ツ木君の屍体なんて秘密の場所に片づけてしまうから出て来やしないよ。しかしお前たち、黙って見ていてごらん。四ツ木君は何処からも決して帰ってこないから……)とそう仰有ったわよ。どうです。ハッキリしているじゃないの?」
「ほほう、四ツ木さんは殺されたと、動坂氏は云ったのだネ」と僕は愕きを隠し「そしてそれは何日話されたのかネ」
「あれは……兄は二十九日の夜帰って来なかったんですから、翌三十日の夕方のことでしたわ。兄さんの便りを聞くために町子さんについていって貰って、一緒に動坂さんのお邸へ伺ったとき、秘密に話をしていただいたんですわ」
「それっきり、兄さんは帰って来ないの」
「ええ、そうなの……」
といって千代子は悲しそうに目を伏せた。
「深夜の市長」が殺人をするなどとは始めて聞いた。その話によると、四ツ木鶴吉が殺されたのは、二十九日の朝、家を出ていった後のことに違いなかった。するとまず怪しいのは二十九日だ。二十九日、……三月二十九日! 指を繰ってみると、二十九日は例の不思議な事件のあった日だった。「深夜の市長」に始めて会ったり、奇妙な殺人があったり、火事があったり……。