轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しんやのしちょう
深夜の市長
海野 十三
「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页
そうなるといよいよ進退は谷まってしまった。これではもう逃げても逃げなくても捕えられる! 僕はハアハアとあえぎながら、それでも走った。
「おい、こっちに逃げ道があるよオ。――」
唐突に、その家並の軒端と覚しきところから圧しつけるような声が懸かった。僕はその声に、飛びあがるほど驚いた。
「そっちへゆくと危い! 早くこっちへ入れ、こっちへ入れ!」
同じ声は、なおも続いてした。
ハッと思って、声のする方を見直すと、そこは炭屋らしく薪が山のように積まれていた。その蔭から、オイデオイデをして招く何者かがいた。
刑事かもしれないが……。
と僕は思ったけれど、僕の行く道はいずれにしろもう完全に封鎖されていた。この上は本当にも嘘にも、いま声をかけてくれた道一方しか逃げ場がないのだ。――僕はもう覚悟をきめて、
「おい、頼むよオ」
と叫んで、ヒラリとその薪の蔭へとびこんだ。
「おお、よし。――声を出すな。おれについて来い。こっちだこっちだ」
そういって先に立つのは、見たこともないルンペン態の鬚だらけの老人だった。しかしこの老人、年齢に似合わず力があって、いきなり僕の手を握ると、ズルズルと物蔭へ引張りこんだ。