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しんやのしちょう

深夜の市長

海野 十三

「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页

青空文庫

さあ――この単刀直入的な問いには、遉の僕もウムと呻ったまま、急に応えるべき言葉も見つからなかった。

「一体どっちの道を行こうというのかネ。司法官として出世するつもりなら、この際もう俺たちとは手を切って貰いたいネ。俺たちと交際っていれば、泥を握ることはあっても、黄金の冠を拾うようなことにはますます縁どおくなるよ」

僕はルンペン老人とばかり思っていた「深夜の市長」が、意外にも六ヶ敷いことを云いだしたので呆れるほど愕いてしまった。この唯者ではない「深夜の市長」の正体は何だろう。――

そのとき、最前から奇妙な器械の前に坐って、しきりに何かを調べていた街の科学者速水輪太郎がつと腰掛から立ち上って、こっちへ歩いて来た。

「さあ、時分は恰度よいようですが、出懸けましょうか」

「そうか。では出発としよう」

「深夜の市長」は立ち上ったが、急に眩暈でもしたらしく、フラフラと蹣跚いた。

「呀ッ、どうしましたッ」「もし、しっかりしてエ」

倒れようとする「深夜の市長」を、駆けよった速水とお照が、背後から危く支えた。

「うっ、痛……」

「深夜の市長」は真青になって、歯をギリギリと噛み合わせた。