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しんやのしちょう

深夜の市長

海野 十三

「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页

青空文庫

冷血動物だ。お前はいつも自分だけがいい子になろうとして、責任を回避していたからこんなことになったのだ。お前には意志の力がない。男らしい決心がない。そして不親切だ。恥じるがいい)

僕は胸許をギュウギュウを絞めつけられるように感じた。

その声はまだ続いた。

(……お前はここで気がつかなければならない重大な義務を忘れているぞ。なぜ早くそれを思い出して、その義務を果たそうとはしないのだ。このままでは、お前はまた彼女を、新しい地獄の淵につき墜すようなものだ。反省しろ、そして実行するんだ。マスミに対する罪を贖うには、今からでも決して遅くはないぞ!)

僕は苦しさに怺えられなかった。マスミへの罪、マスミに対して、まだ果さない義務とは何であろう。……僕は胸に手を置いて考えた。何だったか、それは何だったろう……。

「そうだ。アレだ。アノことだッ。……」

僕は予てマスミに対して伝言したい一つの事柄を持っていたのに気がついた。なぜそれを忘れていたのだろう。僕はポケットからノートを出して、その上に鉛筆で走り書に次のようなことを認めた。

――マスミサン、貴女ノ兄サンノ四ツ木鶴吉氏ハ、先月ノ二十九日ノ夜、本所ノ亀井戸近クデ殺害サレマシタ。