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しんやのしちょう

深夜の市長

海野 十三

「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页

青空文庫

それも型のすこし大きいやつだろう」

「えッ、――」

僕はギクリとした。ナイフといえば、僕はいつも大型の七つ道具のついたナイフを持って歩いていた。それはいつもチョッキの右下のポケットに入れてあった。ソッと、触ってみると、そのときもその場所に固いものが手に触れた。たしかに大型のナイフを持っていた。

「そうだろう。……これを御覧よ。このニッケル貨幣は三枚とも糊で貼りあわせたように、ピタリとくっついて離れない。何故だろう? これはつまり、このニッケル貨幣が強い磁力を持っているせいなんだ。いまお前さんが取出したとき、変な恰好をして繋がっていたから、それで気がついたのだ。こいつは余程風変りな事件だぞ」

老人はそういって、首をかしげた。密着して離れない三枚のニッケル貨幣!

「そんなことから風変りな事件だということが分るんですかね。もっともニッケル貨幣同志で、こんなにくっつき合っているのを見たのは今が始めだけれど……」

「実に風変りだ。だが風変りだけに、こいつは早く種があがるかも知れないよ。まだ有る筈だ。ほらこれだこれだ。この時計を御覧よ」と老人は懐中時計の硝子蓋を叩きながら、目を輝かした。