轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しんやのしちょう

深夜の市長

海野 十三

「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页

青空文庫

ハッとしてその場にピーンと棒立になったその前を丸まった新聞紙が小馬鹿にしたように、風に煽られて通りすぎた。しかしそれは誰かもうこの世にはいない元丸の内勤めのサラリーマンの迷える魂が、仮りに新聞紙に慂り移って、懐しい想い出多い深夜のビル街を散歩しているようでもあった。また一陣の風が、ヒューッと物悲しげな音をたて、舗道の上を吹いてきた。

湖水の底に沈んだ廃都のような暗黒のビル街を縫って尋ねてゆくうち、求める丸の内第十三号館というのが漸くにして見つかった。それは古めかしい三階建の煉瓦造だった。しかし闇の中に透してみると、かなり宏大な、まるで城廓のようにも見える建物だった。

その第十三号館の外れまでくると、酔っぱらいの年増女の腕に書いてあった地図のとおりに、隣りの建物との間に人間一人がやっと通れるくらいの実に狭い路地があった。

「此処だナ。――」

僕は決心すると、あたりに充分気を配りながら、徐ろに奥の方へ這入っていった。

「一イ、二ウ、三イ。……三つ目の窓だったな」

窓の下に空気抜けの四角な穴があった。そこには頑丈な鉄の格子が嵌っていたが、僕は跼むとそれに手をかけ横に引くと、年増女の腕にかきつけてあった文字どおりに、鉄格子がズルズルと十センチほど摺れて、あとにポッカリと穴が明いた。