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しんやのしちょう

深夜の市長

海野 十三

「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页

青空文庫

そうするといかに寝坊の僕でも必ず眼を覚すにちがいがない。これで僕は今夜、枕を高うして睡られると悦んだ。

寝床へ入ってウトウトすると、夢心地に誰かシクシクと泣き声を立てているのが耳に入った。

「オヤッ、――」

と思って床を蹴って起きあがった。それからなおも聞き耳を立ててみたが、その後は一向に泣き声が聞えない。

「――どうも変な日だなア。ことによると、昨夜からあまり神経を使いすぎているので、急性神経衰弱症というのにでもなったのじゃあるまいか。……」

と思った。だが、もう、その後は泣き声が聞えないと分ると、また急にねむたくなってきた。こんなにねむくなるようでは、神経衰弱症も可笑しいぞと思いながら、再び寝床の中にずるずると潜りこんだ。そこまでは覚えているが、後はすこしも記憶がない。

どの位睡ったのか、自分にはよく分らなかったが、何かの物音に目を覚し、薄眼を開いてみると、眩しいばかりに朝日がさしていた。天気がいいにしても、あまりに明るすぎると思って、本格的に両眼を開いてみると、なんのことだ。閉めて置いたと思った窓の雨戸がすっかり明いていて、障子の上にはあかあかと朝日が照り栄えているのだった。