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しんやのしちょう
深夜の市長
海野 十三
「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页
そんなことは輪太郎から聞いたらいいだろう。それよりも例の事件を早く解決しなければならないのだ。そうだ、恰度いい。お前さんも一緒に来て、手伝ってくれないか」
「えッ、それではこれから出掛けて、二十九日の夜の殺人事件の謎を解こうというのですか」僕は深夜の市長の毅然たる面を見上げていった。「それならこっちからお願いします。連れてって下さい」
「うん、そうして貰いたい。その代り駄賃として、途中で面白い話を聞かせてやる。一昨夜油倉庫の火事があったことを知っているだろう。あの火事も一と通りの火事とは訳が違うという話だ。どうだこれなら面白いだろう」
「ああ、あの夜の火事が曰くつきなんですか。……」
「そうともそうとも、新聞には出ていないが、あの火事場に半焼けになった人間の片腕が転がっていたのだ」
「ほう、片腕が、……ですか」
「うん。ところがその片腕を拾おうとすると、なんのことだ何処に行ったか、影も形も見えなくなっていたというんだ」
「焼け棒杭かなんかが、人間の片腕に見えたのでしょうか」
「そういう解釈もあるねえ、何しろ油倉庫にいた人達の中には行方不明者なんか一人も居らないし、それに……それに附近にいたルンペンどもの頭数もちゃんと揃っていた。