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しんやのしちょう
深夜の市長
海野 十三
「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页
いや、どうも済みませんでしたね」
そういって「深夜の市長」は、何遍も丁寧に頭を下げた。そして僕を促して、そこを立ち去ったのである。
「どうもお前さんにも、散々苦労をかけたが、これで用事は一と先ず済んだよ。だが苦労しただけあって、今夜の話はお前さんにも面白かったろう。ことに四本指の手のことなんかはネ」
僕は「深夜の市長」と、目黒の通りを肩を並べて歩みながら、さっきから聞いてみたいと思ったことを遂に口に出した。
「驚きましたネ、貴方は。まるで名探偵のようじゃないですか。真逆、名探偵の化けたのじゃないでしょうね」
「はッはッ。変なことを云いっこなしだ」
「しかし貴方はどうして二十九日の夜の事件や、銀行を訪ねてまわって今の話のようなことを知りたがるのですか」
「知りたがるのは、儂の道楽なのじゃ。説明しろといったって、それ以上説明ができるものかね。だが、あの横丁の殺人事件、油倉庫出火事件、それにいまの銀行の話と、都合三つの真相さえ分ればお前さんも警察に追っ駆けられたりする心配がなくなるじゃないか」
「僕自身のことも、大変有難いですが、こうして考えてくると、今の三つの話はどうやらお互いに関係がありそうですね」