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げんだいゆいぶつろんこうわ

現代唯物論講話

戸坂 潤

「現代唯物論講話」白揚社、1936(昭和11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 251,295 字 · 490 页

青空文庫

だが直観空間をそのまま幾何学の根柢とするのでさえなければこの困難はすでに救われている。三次元の直観空間をn次元の他の――幾何学的――空間にまで拡張すれば好いのだから。併しこの拡張は直観自身では不可能である。だからこの場合、直観空間に何かが――丁度先程曲率という数学的思惟内容が加わったように――加わらねばならない。そこには定式(formula)の一般化という数学的思惟が加わるのである(例えば円の三次元式 a1x12 + a2x22 + a3x32 = 1 は円の一般式 a1x12 + a2x22 + a3x32+ …… + anxn2 = 1 に拡張され得るように。

カントは直観空間に私かに悟性を結合して、形式的直観の概念を得たにも拘らず、飽く迄直観空間がそのまま(形式的直観として)幾何学の基礎――幾何学的空間――になれるかのように考えた。凡ての困難はそこにあったのである。吾々によれば直観空間に数学的思惟――之は悟性にぞくする――が加わらなければ、それは幾何学的空間になれない。こうすることがカントを救う唯一の正しい道なのである。――最近ベッカーは、カントの直観空間を、人間生活を中心とした、近接空間だと考える。