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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
03 下巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 226,715 字 · 431 页
今迄自分が本家に対して事ある毎に庇ってやっていた妹を、ここへ来てそんなことぐらいで見放してよいものであろうか。夫は少しあの妹を悪く思い過ぎている。あれでこいさんは、何と云ってもお嬢さん育ちのところがあって、芯は気の弱い、人の好い女なのである。自分はあの妹が早く母に死に別れたのを不憫に思い、及ばずながら母に代って慈しむようにして来たのに、母の法事の時になって家から追い出すなどと云うことが出来るものでない。―――
「僕かて何も、そうせないかん云うのんとは違うで」
と、貞之助は妻の眼の中を見ると、少し狼狽え気味で云った。
「―――今のはこいさんが僕のほんとうの妹やったら、と云う仮定の話やで」
「あんた、このことはあたしに任しといて下さい。―――いずれ姉ちゃんが来やはったら、姉ちゃんにだけそっと話して、含んで置いて貰いますよってに。―――」
しかし幸子は、ほんとうに姉に話すかどうかはその時の工合にしよう、兎も角も廿四日の法事が滞りなく済む迄は云わずに置こう、と云う腹であったが、姉の一行が蘆屋へ着いた廿二日の晩に、雪子にだけ打ち明けて、彼女の判断を求めて見た。と、雪子は、縒りが戻ってくれた事は何にしても結構である、啓坊が勘当された事はそんなに重大に考えるには及ぶまい、品物を持ち出したと云っても、自分の店の物であって見れば、