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ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

03 下巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 226,715 字 · 431 页

青空文庫

「そんなこと、聞いて見る迄もあれへん」

「そんなら、どうしょう」

「もうちょっと放って置いたら、―――」

「今度はそんな訳に行けへん、貞之助兄さんも本家に賛成らしいよってに」

幸子は、兎に角云うて見るよって雪子ちゃんも立ち会うて、と云って、その明くる朝二階の妙子の居間を締め切って、三人の姉妹だけで話した。

「なあ、こいさん、長い間でのうても、暫く東京へ行ってくれへん?」

そう云われると妙子は、子供のように首を振って「いやいや」をした。

「うち、本家と一緒に暮すぐらいなら死んだ方が優しや」

「そんなら、どない云うとこう」

「どないなと、云うといて欲しい」

「そうかて、今度は貞之助兄さん迄本家に附いてはるよって、有耶無耶にしとく訳に行かんねんわ」

「そんなら、当分独りでアパート住まいでもするわ」

「こいさん、啓坊の所へは行けへんの?」

「交際はするけど、一緒に住むのんは御免やわ」

「何で」

そう聞くと妙子は黙ってしまったが、結局、誤解されるのが厭だからであると云った。そしてその誤解と云う意味は、自分は啓ちゃんを憐れんでいるに過ぎないのに、愛してでもいるように思われるのは心外であるから、と云うことらしいのであった。