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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
03 下巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 226,715 字 · 431 页
を底の底まで知り抜いている姉の身には最初から分っていることで、雪子の性分として無理もないことに思えるのであるが、それでいて幸子は腹が立ってならなかった。ロクに知らない男なんぞと外を歩いたり料理屋へ行ったりすることは如何にも厭であろうけれども、それでは幸子には兎も角も貞之助に済むまいではないか。貞之助や幸子にしても今度は随分極まりの悪い思いをしたり節を屈したりしていることを考えてくれたら、少しは当人も勤める気があってもよいではないか。まして橋寺がそんな電話を懸けて来たと云うのは、あの人として大奮発したのであろうに、それをそっけなくあしらわれてはどんなにか落胆したことであろう。
「そんなら、断ってしもたん?」
「ちょっと差支えがございますので、云うといたけど、………」
断るにしても尤もらしい口実を構えて言葉上手に断ったのならまだしもであるが、どうせそんな芸当の出来る人ではないので、さぞ不細工に、取って附けたような挨拶をしたことと思うと、幸子は何がなしに口惜し涙が溢れて来た。そして、眼の前に雪子を見ていると一途に腹が立って来るので、ぷいと階下へ下りて行って、テラスから庭へ出た。