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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
03 下巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 226,715 字 · 431 页
をしているだけだと云っていたのを、そのまま信じていたのでもないけれども、努めて深くその疑問を突き止めないようにして来たのであったが、雪子はじっと黙っていながら、余程前から妙子に対して無言の批難と軽蔑とを示していたのであった。
「こいさん、どない?―――えらい痩せた云うことやったけど、そないでもないわな」
と、幸子は出来るだけ平生と変らない口調で云った。
「今日は何回ぐらい下痢があったん」
「今朝から三回あったわ」
と、妙子は例の無表情な顔をして、低い、しかしはっきりした声で答えた。
「―――けど、絞るばかりでなんにも出えへん」
「それがこの病気の特長やわ、裏急後重云うやないか」
「ふん」
と云ってから妙子は、
「もう鯖鮨には懲りたわ」
と、始めて微かに笑って見せた。
「ほんに、もう今度から鯖は決して食べるこッちゃないな」
そう云って、幸子はちょっと改まって、
「こいさん、何も心配することはないねんで。けど斎藤先生が、大事を取るに越したことはないさかい、念のために誰かもう一人相談相手になる先生を呼んでほしい云うてはるよって、櫛田さんに来て貰おう思うてるねん」
幸子が突然そう云い出したのは、蔭で三人がこそこそ相談し合ったりして、まだ重態であることを自覚していないらしい病人の神経を刺戟するより、こう云う風に直接打つかってしまった方がよいで