轻松读懂日语经典作品
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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
03 下巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 226,715 字 · 431 页
奥畑はそう云いながら、片脚をすっかり縁側の閾に載せて、真っ直ぐに伸ばして、開け切った硝子障子の縁を踵で押さえ、新調の靴が妙子の方へよく見えるようにした。
「―――今やさかい云うけど、こいさん危なかったんやで」
「ふん。―――分ってたわ、そんなこと」
と、妙子がわりに力のある声で応じた。
「―――地獄の一丁目まで行って来たわ」
「いつ頃起きられるようになるやろう? 今年のお花見フイにしてしまうで」
「うち、お花見より菊五郎が見たいわ」
「そんな元気があるのんやったら、もう大丈夫や」
そう云って奥畑は、
「どうですやろ、今月中に出歩けるようになりまっしゃろか」
と、「水戸ちゃん」の顔を見たが、
「さあ、………」
と云ったきり、「水戸ちゃん」も相手にならなかった。
「僕昨夜、坂口楼で菊五郎と一緒やった」
「誰が菊五郎呼びやはったん?」
「柴本君が呼んでん」
「あの人、えらい六代目贔屓やてな」
「この間から一遍六代目と飯食うさかい来給え云われててんけど、六代目の奴、なかなか来おれへなんでん。―――」
生れつき急勝で、注意力が散漫で、じっと一つ事に身を入れることの出来ない奥畑は、見る物と云ってはせいぜい映画ぐらいなところで、芝居などは辛気臭がってめったに覗かないのであるが、それでいて俳優と交際することを好み、以前金廻りの好かった時代には、しばしば彼等