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ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

03 下巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 226,715 字 · 431 页

青空文庫

こいさんなんかももうお婆さんになった証拠や」

貞之助はそう云って、

「井谷さんなんかでも、亜米利加で修行して来た人やし、商売柄洋服着んならんとこやけど、いつも和服着てるやないか」

「ほんに、井谷さんいつも和服やわ。―――あの人こそもうお婆さんですよってにな」

幸子はそう云って、

「それはそうと、さっきの話、今夜井谷さんにどない云いましょう」

「そのことやが、僕はこう思うねん。―――この際あまり縁談のことには触れんとおいて、兎も角も井谷さんの送別会に出席するために東京へ行ったらええやないか。ぜんたい縁談のことがのうても、それぐらいなことはせんならんねんよってに」

「ほんになあ、そうですわ」

「僕かて行くのが本当かも知れんけど、生憎ここのところ用事があってよう行かんさかい、お前と雪子ちゃんだけなと行くねんな、こいさんも行ったらなおええけど。………」

「うちかて行かして貰いますわ」

と、妙子が云った。

「ちょうど陽気もええよって、見送り旁久振に東京見て来ますわ。今年はお花見に外れたさかい、その埋め合せさして貰わんと、………」

いったい妙子は、ほかの二人ほど井谷に義理があるのではなかった。