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ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

03 下巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 226,715 字 · 431 页

青空文庫

が、兎も角も来月上京して国嶋氏にお目に懸り、今云った点を確かめて見たいと思っているので、………と、云うような挨拶をしたのであったが、なるほど、よく分りました、そう云う御不安がおありになるのは御尤もです、と、光代は云って、私の一存ではお答え致しかねることもありますから、帰りまして社長にその旨を伝え、将来の保証について必ず御納得が行くような方法を講じましょう、それでは来月お待ちしております、と、そう云うと、折角ですが今夜の夜行で立ちますからと、晩の御飯でもと云うのを断って辞去した。

幸子は十二月の上旬に雪子を誘って京都の清水寺へ行き、妙子のために安産の祈祷をして、お札を貰って帰って来たが、ちょうど申し合せたように、三好からも貞之助の事務所へ宛てて、これをこいさんにお上げになって下さいと云って、中山寺の安産のお守りを封入して来た。この二つのお札は、お春が折よく使いに来たので、ついでに持たして帰したが、暫く妙子に会わずにいる幸子たちは、その時のお春の話で、妙子が朝夕規則的に散歩に出る外は終日部屋に閉じ籠って神妙にしていること、その散歩も、なるべく街の方を避けて、人通りの少い山路を歩くようにしていること、部屋にいる時は小説を読んだり、久振に人形の製作をして見たり、赤ん坊の産衣を縫ったりしているが、誰からも一通の手紙