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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
03 下巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 226,715 字 · 431 页
で来る通路に当っているので、毎日毎晩爆撃機の編隊が通り、盛んに爆弾を落すけれども、非常に深い完備した防空壕があるので、そこに電燈をカンカンつけて、ダンスレコードをジャンジャン鳴らして、コクテルを飲んではダンスしている、戦争なんてとても愉快で、恐いことなんかちっともないって云って来ました、だから皆さんに心配しないように云って下さい、と、そう仰っしゃって笑って行っておしまいになりました、と云うのであった。幸子はいかにもカタリナらしい話として、それは面白く聞いたけれども、おしゃべりのお春が何か口外しなかったであろうかと気に懸って、キリレンコさん、何ぞこいさんのこと聞かはれへなんだ、と云うと、いいえ、何も、………と云うので、ほんまかいな、お春どん、ほんまに何も余計なこと云うてやないねんやろうな、と念を押して、それにしても、何かこいさんのこと知ってはるらしい様子見えへなんだ? と、聞いて見たが、何も知っておいでのようやございませなんだ、と、はっきり否定するので、どうやらほっとしたものの、それにつけても出入りに人に見付からぬように気を付けて欲しいこと、一人の時はまだよいが、妙子と散歩などに出る時には、いつ、誰に見られないとも限らないので、用心の上にも用心して欲しいことなど、くれぐれも云い含めて帰したのであった。